それは錯覚です。

昨日、夕食を食べながらNHKの「イッピン」という番組を観ていました。

内容は、斬新なデザインの鉄瓶を作っている山形鋳物の製造現場と、その鋳物に繊細な装飾をほどこす職人さんの技術の紹介というものでした。


こういった工場見学ものや「職人の手仕事見せます」といった感じの内容の番組は最近特に多くなっていて、私もTVをつけた時にこれ系の番組がやっていれば大体観ますし、内容も面白くて同じものづくりに携わる人間としては非常に勉強になります。


こうした番組で必ず映されるのが、職人さんの「手仕事」の様子。

私はいつも思うのですが、あらゆる業種の熟練された職人さん達に共通していること。

それは、「誰でもできそうに、その仕事をしている」

ということです。

昨日放送されたイッピンの内容で言えば、鋳物の外側に銀でできた花の装飾を外れぬように打ち込んでいる作業所が紹介されていました。
「その道何十年」「山形にはもう○人しかいない」といわれる職人さんの繊細な手つきが映し出されます。

その仕事を観ていると、「あれ、、、これ、打つだけでしょ?俺でもできるんじゃね?」と思えてくるのです。

もちろん錯覚です・・。
本物の職人さん、達人というのは、いとも簡単そうに、誰でも出来るかのように、その仕事を流れるような手つきで、迷いなく、特別な様子も無く、サラリと完成させる人の事だと思います。

饅頭の中に餡子を練り込む、稲藁から縄をなう、イカの塩辛工場でイカをさばく、カツオをおろす、玄翁を振る、ヤスリで磨く、ジョキジョキと髪にハサミを入れる、蕎麦をうつ・・・などなど、多くの手仕事をTV番組や、実際に現場で見させてもらい、時に体験させてもらったものもありました。

体験させてもらったものはいずれも見て感じた以上に遙かに難しいものばかりでした。
お手本で見せてもらって感じていた「これくらいはできるんじゃね?」は全て錯覚でした。(私が不器用というのは置いといて

世の中には様々な手仕事があるものですが、職人さん達が見せる、「手慣れている」という言葉とも何かが違う、当たり前のようにやるあの感じ。

私の知る言葉ではこれ以上に上手く伝えられる気がしませんが、達人というのはもはや素人に錯覚を見せる魔術師と言える程の域に達している人の事を言うのかもなあ〜と思いました。

今日はこの辺で。それでは、また!