こんにちは。
今年も残りあとわずかとなりましたね。
年々、時間の経過が加速度を増しているかに思える今日このごろ。本当にあっという間の一年でした。

さて先日、私の所属する三条木工組合の勉強会&忘年会が行われました。
勉強会のテーマは「製品安全の取り組みでクレーム・返品ゼロを実現」。
講師として、(株)相田合同工場 取締役社長の相田聡様をお招きしてのものでした。
相田合同工場さんは、鍬の刃の製造を主としている三条の老舗鍛冶屋さんで、現会長は「県央マイスター」にも認定されている三条鍛冶界の重鎮。その確かな鍛冶技術を社内の若い世代の職人さんへと継承していく一方で、社長の相田さんはさらに「鍬」の正しい選び方・使い方をユーザーに深く知ってもらえるよう、ワークショップを全国各地で開催されていたり、自社工場への見学を受け入れていたり、あるいは鍬ギャラリーを自社内に設置されて交流の場を作っていたりと、エンドユーザーとの交流を積極的に進められてきたお方です。
また、今回のテーマとなっている「製品安全」という分野においても、他の企業よりも大きく先んじて対策を講じておられ、実は私も、相田さんの書くブログをちょくちょく読ませていただいておりました。

相田さんのお話では、鍬は地域や用途ごとにあらゆる形状のものがあり、その用途に合っていないものをお客さんが購入してしまったり(誤購入)、正しい使用方法や保管方法で無かったために生じるトラブル(誤使用)というのに関するクレームがこれまで非常に多かったと言います。
そこで相田さんは、鍬にも取扱説明書や表示物を付属させることが必要だと感じ、その商品に関する情報をユーザーへとはっきりと明確に発信し伝えることで、こうした想定していない使用方法等によって生じるクレームや返品を大幅に減らすことができた、とお話されていました。

相田さんのお話の中で特に興味深かったのが、「こうした取り扱説明書や表示物をつくる中で、従業員や職人さんの意識やスキルの向上に繋がっていった」ということです。

製品を正しく安全に使用してもらうということを従業員全員で考え、製品に内包されているリスクの洗い出しをし、設計、製造、そして自分たちで実際に使う試験を経て販売する。そして販売した商品を、ワークショップなどを通じ消費者から意見や要望を取り入れ、また設計・製造というサイクルを作る。
書いてみると「それはメーカーとして当たり前にやるべきことでしょ」と思いがちですが、こうした好循環のサイクルを生み出しながら日々の作業をされているという会社は意外と少ないのでは、と思います。

説明書や表示物を作り、鍬の各部分の呼称から、使用目的・用途(雑草の根切りだとか、土おこしだとか)をしっかり定義付けすることで、従業員には「自分たちはどういう用途の鍬を作っているのか?」「使うときにどのような危険や、不便などがあるだろうか?」とひとりひとりが思考をしユーザーの立場から自社の製品を俯瞰してみる機会を設けることで、日々の作業の質は非常に高いものになっていくと思います。
こうして様々な問題点の芽を潰していくことによって、さらに安心で使える、洗練された品物ができあがるし、それが「信頼できる商品」「安心して使える商品」といえるのだと思います。そしてこうした物こそが「ブランド品」と呼ぶにふさわしいのだろうなあ、と感じました。
説明書や表示物を作ることは、エンドユーザーにとっては鍬を選ぶときに迷うことなく、したい作業に最適な鍬を安心して購入できるようにするというメリットがあることはもちろん、さらには従業員のスキルアップにもつながる。確かにコストは伴うが、コスト以上に効果はとても大きいよ、というお話でした。

さすが相田社長。同じメーカーとして、大いに取り入れ参考にすべきことを多く学べた貴重な機会でした。しっかりと見習わなければ。

それでは、今日はこの辺で。